*弁天山*

BENTENYAMA

一寸法師の懐中から何か黒いものがころがり落ちた。
繻子の風呂敷で包んだ、一尺ばかりの細長い品物だったが、風呂敷の一方がほぐれて少しばかり中身がのぞいていた。
それは明らかに、青白い人間の手首であった。きゃしゃな五本の指が断末魔の表情で空をつかんでいた。

「一寸法師」 大正15年12月8日〜昭和2年2月20日「東京朝日新聞」


実は上記のシーンは弁天山を舞台にしているわけではないでしょうが、現在浅草公園内で小高い場所といったら弁天山くらいなので、わたしはここを連想してしまいます。弁天山には鐘楼があって、観音様の除夜の鐘はここで打ち鳴らされます。古さといい櫓の形といい、なかなかよい風情の鐘であると思います。 ところで弁天山界隈というところは、浅草でもグルメ地帯で、日本料理の暮六つ、寿司屋の弁天山美家古、水炊きの鳥金田、洋食の大宮などお薦めの味が目白押しです。




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